内閣告示第二号

送り仮名の付け方

一般の社会生活において現代の国語を書き表すための送り仮名の付け方のよりどころを、次のように定める。なお、昭和三十四年内閣告示第一号は、廃止する。

昭和四十八年六月十八日

昭和五六年一〇月一日内閣告示第三号 改正
平成二十二年十一月三〇日内閣告示第三号 改正

前書き

 この「送り仮名の付け方」は、法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など、一般
 の社会生活において、「常用漢字表」の音訓によつて現代の国語を書き表す場合
 の送り仮名の付け方のよりどころを示すものである。

 この「送り仮名の付け方」は、科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々
 人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

 この「送り仮名の付け方」は、漢字を記号的に用いたり、表に記入したりする
 場合や、固有名詞を書き表す場合を対象としていない。

「本文」の見方及び使い方

一 この「送り仮名の付け方」の本文の構成は、次のとおりである。

単独の語

1 活用のある語

 通則1 (活用語尾を送る語に関するもの)

 通則2 (派生・対応の関係を考慮して、活用語尾の前の部分から送る語に
  関するもの)

2 活用のない語

 通則3 (名詞であつて、送り仮名を付けない語に関するもの)

 通則4 (活用のある語から転じた名詞であつて、もとの語の送り仮名の付け方
  によつて送る語に関するもの)

 通則5 (副詞・連体詞・接続詞に関するもの)

複合の語

 通則6 (単独の語の送り仮名の付け方による語に関するもの)

 通則7 (慣用に従つて送り仮名を付けない語に関するもの)

付表の語

1 (送り仮名を付ける語に関するもの)

2 (送り仮名を付けない語に関するもの)

二 通則とは、単独の語及び複合の語の別、活用のある語及び活用のない語の別等に応じて考えた送り仮名の付け方に関する基本的な法則をいい、必要に応じ、例外的な事項又は許容的な事項を加えてある。

 したがつて、各通則には、本則のほか、必要に応じて例外及び許容を設けた。ただし、通則7は、通則6の例外に当たるものであるが、該当する語が多数に上るので、別の通則として立てたものである。

三 この「送り仮名の付け方」で用いた用語の意義は、次のとおりである。

 単独の語
   … 漢字の音又は訓を単独に用いて、漢字一字で書き表す語をいう。

 複合の語
   … 漢字の訓と訓、音と訓などを複合させ、漢字二字以上を用いて書き表す
     語をいう。

 付表の語
   … 「常用漢字表」の付表に掲げてある語のうち、送り仮名の付け方が問題
     となる語をいう。

 活用のある語
   … 動詞・形容詞・形容動詞をいう。

 活用のない語
   … 名詞・副詞・連体詞・接続詞をいう。

 本則
   … 送り仮名の付け方の基本的な法則と考えられるものをいう。

 例外
   … 本則には合わないが、慣用として行われていると認められるもので
     あつて、本則によらず、これによるものをいう。

 許容
   … 本則による形とともに、慣用として行われていると認められるもので
     あつて、本則以外に、これによつてよいものをいう。

 単独の語及び複合の語を通じて、字音を含む語は、その字音の部分には送り
 仮名を要しないのであるから、必要のない限り触れていない。

 各通則において、送り仮名の付け方は許容によることのできる語については、
 本則又は許容のいずれに従つてもよいが、個々の語に適用するに当たつて、許
 容に従つてよいかどうか判断し難い場合には、本則によるものとする。
 

本文


単独の語

1 活用のある語

通則1

本則 
 活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は,活用語尾を送る。

 〔例〕 憤 承 書 実 催 生きる 陥れる 考える 助ける 
  荒 潔  賢 濃 主だ 

例外
 (1) 語幹が「し」で終わる形容詞は,「し」から送る。

 〔例〕 著い 惜い 悔い 恋い 珍

 (2) 活用語尾の前に「か」,「やか」,「らか」を含む形容動詞は,その音節
  から送る。

 〔例〕 暖だ 細だ 静だ 穏やかだ 健やかだ 和やかだ 明らかだ 
     平らかだ 滑らかだ 柔らか

 (3) 次の語は,次に示すように送る。

  明む 味う 哀む 慈む 教る 脅す(おどかす) 
  脅す(おびやかす) 関る 食う 異 る 逆う 捕る 群る 
  和ぐ 揺る 明い 危い 危い 大い 少い 小い 
  冷い 平 い 新だ 同だ 盛だ 平 だ 懇だ 惨だ 
  哀だ 幸だ 幸だ 巧

許容 次の語は,( )の中に示すように,活用語尾の前の音節から送ることができる。

 表す(表す) 著す(著す) 現れる(現れる) 行う(行う) 断る(断る) 
 賜る(賜る)

 (注意) 語幹と活用語尾との区別がつかない動詞は,例えば,「着」,
  「寝 」,「来」などのように送る。

通則2

本則
 活用語尾以外の部分に他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔 〕の中に示す。)

 〔例〕

 (1) 動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの。
  動かす〔動く〕 照らす〔照る〕 語らう〔語る〕 計らう〔計る〕 
  向かう〔向く〕 浮かぶ〔浮く〕 生まれる〔生む〕 押さえる〔押す〕 
  捕らえる〔捕る〕 勇ましい〔勇む〕 輝かしい〔輝く〕 喜ばしい〔喜ぶ〕
  晴れやかだ〔晴れる〕 及ぼす〔及ぶ〕 積もる〔積む〕 聞こえる〔聞く〕
  頼もしい〔頼む〕 起こる〔起きる〕 落とす〔落ちる〕 暮らす〔暮れる〕
  冷やす〔冷える〕 当たる〔当てる〕 終わる〔終える〕 変わる〔変える〕
  集まる〔集める〕 定まる〔定める〕 連なる〔連ねる〕 交わる〔交える〕
  混ざる・混じる〔混ぜる〕 恐ろしい〔恐れる〕

 (2) 形容詞・形容動詞の語幹を含むもの。
  んずる〔重い〕 やぐ〔若い〕 怪しむ〔怪しい〕 悲しむ〔悲しい〕
  苦しがる〔苦しい〕 確かめる〔確かだ〕 たい〔重い〕 
  らしい〔憎い〕 めかしい〔古い〕 細かい〔細かだ〕 
  柔らかい〔柔らかだ〕 らかだ〔清い〕 らかだ〔高い〕 
  寂しげだ〔寂しい〕

 (3) 名詞を含むもの。
  ばむ〔汗〕 んずる〔先〕 めく〔春〕 らしい〔男〕 
  後ろめたい〔後ろ〕 

許容 読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

 〔例〕 浮ぶ(浮ぶ) 生れる(生れる) 押える(押える) 
   捕える(捕える) 晴やかだ(晴やかだ) 積る(積る) 
   聞える(聞える) 起 る(起る) 落す(落す) 暮す(暮す) 
   当る(当る) 終る(終る) 変る(変る)

 (注意) 次の語は,それぞれ〔 〕の中に示す語を含むものとは考えず,
  通則1によるものとする。

   明るい〔明ける〕 荒い〔荒れる〕 悔しい〔悔いる〕 恋しい〔恋う〕



2 活用のない語

通則3

本則 名詞(通則4を適用する語を除く。)は,送り仮名を付けない。

 〔例〕 月 鳥 花 山 男 女 彼 何

例外 
 (1) 次の語は,最後の音節を送る。

  辺 哀 勢 幾 後 傍 幸 幸 全 互 便 半
  情  斜 独 誉 自 災

 (2) 数をかぞえる「つ」を含む名詞は,その「つ」を送る。

 〔例〕 一 二 三 幾

通則4

本則 活用のある語から転じた名詞及び活用のある語に「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものは,もとの語の送り仮名の付け方によって送る。

〔例〕

 (1) 活用のある語から転じたもの。

  動 仰 恐 薫 曇 調 届 願 晴 当たり 代わり  
  向かい  狩 答 問 祭 群 憩 愁 憂 香 極 
  初 近 遠

 (2) 「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いたもの。

  暑さ 大さ 正さ 確さ 明み 重み 憎み 惜

例外 次の語は,送り仮名を付けない。

 謡 虞 趣 氷 印  頂 帯 畳 卸 煙 恋 志 次 隣 富 恥 話 
 光 舞 折 係 掛(かかり) 組 肥 並(なみ) 巻 割

 (注意) ここに掲げた「組」は,「花の組」,「赤の組」などのように使った
  場合の「くみ」であり,例えば,「活字の組みがゆるむ。」などとして使う
  場合の「くみ」を意味するものではない。「光」,「折」,「係」なども,
  同様に動詞の意識が残っているような使い方の場合は,この例外に該当しな
  い。したがって,本則を適用して送り仮名を付ける。

許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

 〔例〕 曇(曇) 届(届) 願(願) 晴(晴) 当り(当り) 
   代 り(代り) 向い(向い) 狩(狩) 答(答) 問(問) 
   祭(祭) 群(群) 憩(憩)

通則5

本則 副詞・連体詞・接続詞は,最後の音節を送る。

 〔例〕 必 更 少 既 再 全 最 来 去 及 
   且 但

例外 
 (1) 次の語は,次に示すように送る。

  明くる 大いに 直ちに 並びに 若しくは

 (2) 次の語は,送り仮名を付けない。

  又

 (3) 次のように,他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方に
  よって送る。
 (含まれている語を〔 〕の中に示す。)

 〔例〕 併せて〔併せる〕 至って〔至る〕 恐らく〔恐れる〕 
   従って〔従う〕 絶えず〔絶える〕 例えば〔例える〕 努めて〔努める〕 
   辛うじて〔辛い〕 少なくとも〔少ない〕 互いに〔互い〕 
   必ずしも〔必ず〕

複合の語

通則6

本則 複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

〔例〕

 (1) 活用のある語

  書 流 申  打わせる 向かいわせる 
  長引 若返 裏切 旅立 聞しい  薄暗  草深 心細
  待しい  軽々しい  若々しい 女々しい 気軽 望

 (2) 活用のない語

  石橋 竹馬 山津波  後姿 斜左 花便 独言 卸商 水煙 目印
  田植 封切 物知 落書 雨上がり  墓参 日当たり 夜明かし
  先駆 巣立 手渡 入江 飛火 教子 合わせ鏡 生物 
  落葉 預かり金 寒空 深情 愚者 行 伸 乗 
  抜 作 暮らし  売 取 乗 引
  歩 申 移わり 長生 早起 苦 大写 
  粘強さ 有難み 待さ 乳飲 子 無理強 立居振 
  呼電話 次々 常々 近々 深々 休  行

許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕 書抜く(書抜く) 申込む(申込む) 
  打せる(打ち合せる・打合せる) 向い合せる(向い合せる) 
  聞苦しい(聞苦しい) 待遠しい(待遠しい) 田植(田植) 
  封切(封切) 落書(落書) 雨上り(雨上り) 日当り(日当り) 
  夜明し(夜明し) 入江(入江) 飛火(飛火) 合せ鏡(合せ鏡) 
  預り金(預り金) 抜駆け(抜駆け) 暮し向き(暮し向き) 
  売(売上げ・売上) 取(取扱い・取扱) 乗(乗換え・乗換)
  引(引換え・引換) 申(申込み・申込) 移り変り(移り変り) 
  有難み(有難み) 待遠しさ(待遠しさ) 
  立居振(立ち居振舞い・立ち居振舞・立居振舞)
  呼電話(呼出し電話・呼出電話)

 (注意) 「こけら落とし(こけら落し)」,「さび止め」,「洗いざらし」,
  「打ちひも」のように,前又は後ろの部分を仮名で書く場合は,他の部分に
  ついては,単独の語の送り仮名の付け方による。

通則7

 複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って,送り仮名を付けない。

〔例〕

 (1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。

  ア 地位・身分・役職等の名。

   関取 頭取 取締役 事務取扱

  イ 工芸品の名に用いられた「織」,「染」,「塗」等。

   ((博多))織 ((型絵))染 ((春慶))塗 ((鎌倉))彫 ((備前))焼

  ウ その他。

   書留 気付 切手 消印 小包 振替  切符 踏切 請負 売値 買値
   仲買 歩合 両替 割引  組合 手当 倉敷料 作付面積 売上((高))
   貸付((金)) 借入((金))  繰越((金)) 小売((商)) 積立((金)) 
   取扱((所)) 取扱((注意)) 取次((店)) 取引((所)) 乗換((駅)) 
   乗組((員)) 引受((人)) 引受((時刻)) 引換((券)) ((代金))引換 
   振出((人)) 待合((室)) 見積((書)) 申込((書))

 (2) 一般に,慣用が固定していると認められるもの。

  奥書 木立 子守 献立 座敷 試合 字引 場合 羽織 葉巻 番組 番付
  日付 水引 物置 物語 役割 屋敷 夕立 割合 合図 合間 植木 置物 
  織物 貸家 敷石 敷地 敷物 立場 建物 並木 巻紙 受付 受取 
  浮世絵 絵巻物 仕立屋


(注意)

 (1) 「((博多))織」,「売上((高))」などのようにして掲げたものは,(( ))
  の中を他の漢字で置き換えた場合にも,この通則を適用する。

 (2) 通則7を適用する語は,例として挙げたものだけで尽くしてはいない。
  したがって,慣用が固定していると認められる限り,類推して同類の語にも及
  ぼすものである。
  通則7を適用してよいかどうか判断し難い場合には,通則6を適用する。

付表の語

 「常用漢字表」の「付表」に掲げてある語のうち,送り仮名の付け方が問題となる次の語は,次のようにする。

1 次の語は,次に示すように送る。

 浮つく お巡さん 差える 立退 手伝 最寄

 なお,次の語は,( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

 差支える(差支える) 立退く(立退く)

2 次の語は,送り仮名を付けない。

 息吹 桟敷 時雨 築山 名残 雪崩 吹雪 迷子 行方





法制執務コラム集「法令における送り仮名」