「削る」と「削除」の違い


一般的な言葉としては、「削る」という言葉と「削除」という言葉に実質的な違いはありませんが、法制執務では、それぞれの言葉を、別々の改正手法を指す言葉として用います。これは、「枝番号 」といわば対になる手法です。
『じょうれいくん』でも、「削る」と「削除」は異なるボタンを用意しています。
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「削る」

 条項を廃止するときの改正手法としては、原則として、「削る」を用います 。改め文においては、「第○条を削る」と記述するのが基本的な形です。
 削られた条項は消滅しますが、それが条項の途中のものであった場合、続く条項の番号を繰り上げ、欠番を埋めることになっています。
 次の例のように、第10条から第14条まである場合に第11条を削ると、第12条から第14条までは、番号(条名)を繰り上げる改正が必要になります。
第10条 ・・・・・・
第11条 ・・・・・・
第12条第11条 ・・・・・・
第13条第12条 ・・・・・・
第14条第13条 ・・・・・・
 この場合の改め文は次のようになります。 
 第11条を削り、第12条を第11条とし、第13条を第12条とし、第13条を第12条とする。 
 
 このように、条項を「削る」場合、その条項が一連の条項の途中にあるときには、後方の条項の繰り上げが必要となります。こうした条項の移動を、通称としては「条ずれ」「項ずれ」或いは総称して「条項ずれ」等と呼びます。
 

「削除」

 条項の廃止は「削る」が原則ですが、「削る」ことにより条項ずれが生じると、ずれた条項を引用している箇所を、全て改正せねばなりません。そのため、「削る」ことによる条項ずれの影響が大きい場合には、できるだけ条項ずれをさせずに済ませたいこともあります。
 そのような場合には、「削る」とは別の改正手法として、削除という手法があります。「削除」とは、廃止したい条項を「削除」という意味を持たない文言に改めてしまうもので、番号はそのまま残るため、繰り上げによる条項ずれが起きません。
改め文においては、
「第○条を次のように改める。
 第○条 削除       」
のように記述するのが基本的な形です。次の例のように、第11条を「削除」に改めても、第11条の改正のみにとどまります。
第10条 ・・・・・・
第11条 ・・・・・・削除
第12条 ・・・・・・
第13条 ・・・・・・
第14条 ・・・・・・
 この場合の改め文は次のようになります。
 第11条を次のように改める。
第11条 削除
 このようにして、条項そのものは残したまま、実質的には条項を廃止した状態にすることができます。
 なお、「削除」に改める手法は、条のほか、号、別表、別記様式、章等でも用いることができますが、においては用いることはできない、とされています(その理由は、項は条文中の段落に過ぎないためである、とされています。「枝番号」と同様です。)。

 また、「削除」となった条項は、一つのとき、二つ連続するとき、三つ以上連続するときとで、表記の仕方が異なるため、(注意が必要です。『じょうれいくん』では自動的に判断して表示しています。)

<「削除」となった条項が二つ連続するときの表記>
第11条及び第12条 削除
  
<「削除」となった条項が三つ以上連続するときの表記>
第11条から第13条まで 削除
 

《参考》 参議院法制局 法制執務コラム集「条の枝番号と削除」

以上